2019年3月5日火曜日

啓蟄(二十四節気)蟄虫啓戸(七十二候)3月6日~10日 虫が動き出し”昆虫展” ”手揉み茶” ”くくり猿”作り ”みの”作り 林に鮮やかな緑色 黄色の”ミツマタ・サンシュユ” 梅の香ほのか

 先日、”ウグイス(鶯)の初鳴き”を聞きました。まだ少しぎこちないですが一応、”ホーホケキョ”と聞こえました。最近は二十四節気「雨水」に合わせたように雨が多くなりましたが、その一雨ごとに春が近づいてきているようです。「雨水」に続く二十四節気は「啓蟄」、七十二候は「蟄虫啓戸(すごもりむしとをひらく)」となり、「房総のむら」でも、草花の間を飛び回る虫たちを見かけるようになりました。写真は”ナノハナ(菜の花)”にとまった”ナミハナアブ(並花虻)”です。
 現在、「風土記の丘資料館」で開催中の「むらの昆虫」の展示については、「トピックス展 『むらの昆虫』 開催」で紹介されていますが、展示では1,000点以上の”虫たち”が林や草地など環境によってみられる”昆虫”の分類とともに、季節で見られる”昆虫”に分類されています。「1 春」の展示を見ると、「春を待ちわびたように姿をあらわす昆虫があります。これらは春にだけみられる種が多いため、『Spring Ephemeral(春の儚い命)』」と呼ばれます」と、説明があります。皆さんも「春の儚い命」の”昆虫”を探してみてはいかがですか。
 「商家の町並み」「お茶の店」では、「煎茶作り」の実演と体験が行われました。指導は「さしま茶手揉み保存会」の皆さんです(写真:上)。「お茶の店」の店先の、”ホイロ(焙炉)(粘土で作った大きな箱の上に厚手の和紙が張られ、中には熱源が入っていて和紙を温めます)の上で、”手揉み”作業は行われます。「町並み」を歩いていた方々も、「保存会」の皆さんの見事な作業を食い入るように見ていました。体験者の皆さんも、指導を受けながら”茶葉”を揉んでいます(写真:中左)。最終的は細い”針”状になります(写真:中右)が、”茶葉”はきれいに丸められていますから、そのままお湯に入れると”茶葉”の形に戻ります(写真:下左)。すごいです。まさに”職人技”ですね。この日は、できたばかりの”お茶の試飲”もしていただきました。”熱湯”では”渋み”を感じましたが、”少しぬるま湯”だと”甘み”を強く感じました。試飲された方も「おいしい」と。こんな”茶葉”の”煎茶”を飲んだことがありますか。
 では、”手揉み茶”の作り方です。まずは”茶葉”を蒸します。茶葉を蒸すには時間ではなく”蒸した茶葉の香気”によって加減が必要で、出来上がりの茶の品質を左右する重要な作業だそうです。”蒸した茶葉”は温かく熱せられたされた”ホイロ”の上にのせられ、まずは水分を蒸発させます(葉打ち)(写真:上左)。次に”茶葉”の集散を繰り返しながら、適度の力を加え水分を蒸発させ組織を柔らかくしていきます(回転揉み、玉解き)(写真:上右)。柔らかくなった”茶葉”は一度”ホイロ”の外に取り出し、放熱し水分を均一にして仕上げの揉みをしやしくします(中上げ)(写真:中左)。仕上げの段階の揉みでは、初めは”ホイロ”一面で集散し水分を蒸発させながら”茶葉”に撚りを加え(もみみり)(写真:中右)、その後”ホイロ”の上で”茶葉”を揃えて拾い上げ手を前後にすり合わせて揉み、さらに、まとめた”茶葉”を左右に引っ張って二つに分ける作業などを行い”茶葉”の形を整え光沢をだし香味を引き出します(デングリ、コクリ)(写真:下左)。このあたりが”手揉み茶”の妙技の見せ所だそうです。最後に再び”ホイロ”一面に”茶葉”を拡げ、この上を”和紙”で覆いをして最終の乾燥を行い保存に耐えるようにして完成です(写真:下右)。この日の作業は、午前・午後で計4時間ほどかかって完成しました。
 「商家の町並み」「小間物の店」では、”仲良し三人組”で「くくり猿」作りをしていました。”くくり猿”は、”生地”で”綿”を包み、”猿”が両手両足を縛られ動けない姿を現しているといわれます。”猿”は自由奔放に”欲のまま”に動き回る動物のようですが、手足を縛られていては動けません。そんなところから自分の”欲望”が動かないように、”くくり猿”に願い事を託す地域もあるようです。ご自分の好きな”生地”で作った”くくり猿”は、何に使いますか。ストラップですか。雨の中をご来館いただきましたが、ほかの体験も楽しんでいただけましたか。またのご来館、体験をお待ちしております。
 「下総の農家」の”みの”については、既にブログで紹介されていますので、「みの作り」の実演風景の紹介です。指導者は、地元の「高津登志子」さんです。「みの作り」については、昨年も紹介しました(「啓蟄 桃始笑」(3月11日~))ので、そちらも見ていただければと思います。この日は雨の日の実演でしたが、熱心な方が見学されていました。実は、「房総のむら」では”みの”の材料になる”チガヤ(茅萱)”がなくて困っており、しかも、その”チガヤ”を使用するためには”芯”をとって(「小処 鷹乃学習」(7月18日~参照))乾燥させなければならない手間がかかる作業が必要なのです。しかし、見学されていた方は、”チガヤ”は”芯”もとって準備してあるのだそうで、飾りにする”みの”を手作りしたいのだそうです。見学者の方は、「全国にはいろいろな”みの”があるが、「下総の”みの”」がいい」とか。確かに「下総の農家」で作る”みの”は、外側から見てもきれいです(写真:上左)が、背が当たる内側の”クゴ(”スゲ(菅)”に似た背の低い細い葉)”の細葉を撚った細い縄を網状にした”ネット”などを見ると芸術作品に近いものを感じますね(写真:上右)。将来に残したい”みの作り”の技術です。
 「下総の農家」では、「原木しいたけ作り」の体験も行われました。体験では、1mほどの”コナラ(小楢)”の木(写真:上左)にドリルで”穴”を開け(写真:下左)、そこに”シイタケの菌(駒菌)”(写真:上右)を打ち込みます(写真:下右)。”駒菌”は木片(駒)に”シイタケ菌”を培養したもので、”菌”が繁殖して少し白くなっています。できた”原木”は、ご自宅に持ち帰って”シイタケ”が出てくるのを楽しみにしていただきます。ご自宅での管理では、保湿が大変でしょうか。保管する環境によっては、水をかけたり覆いをしてやる必要があるかもしれませんね。木の栄養分と自然環境が作る”シイタケ”ですので、体験の結果がでるのには少し時間がかかりますがどうなるか待ち遠しいですね。
 この時期の林の中は、落ち葉が降り積もり”枯葉色”一色ですが、所々に鮮やかな”緑色”が広がっています。前回紹介した”かしま人形”(写真:上左)や、”風土記の丘の古墳”(写真:上右)の周辺などでも見られます。これは、夏にオレンジ色の花を咲かせる”キツネノカミソリ(狐の剃刀)”の葉です(写真:下右(昨年夏撮影))。”キツネノカミソリ”は、”ヒガンバナ(彼岸花)”と同じで花が咲く時には葉はなく、ほかの草が生えないこの時期に名前の由来にもなっている”細長い葉(狐の剃刀)”(写真:下左)を伸ばし栄養を蓄え、多くの草が生茂る夏前には葉を落として、7月末頃から花を咲かせるのです。このところの雨で、緑色がとても鮮やかになってきました。
 春を告げる黄色の花二題です。「商家の町並み」裏の”ミツマタ(三椏)”の花がようやく開き始めました(写真:上)。ほかでは既に咲いているようですが、「房総のむら」ではなかなか咲きませんでしたが、やっと咲き出しました。「風土記の丘エリア」の重要文化財「旧御子神家住宅」の庭の”サンシュユ(山茱萸)”も咲き始めました(写真:下)。どちらも葉がでる前に黄色の”小花”が集まり小さな”花房”のように咲く、春を告げる黄色の花です。
 「上総の農家」近くの”コセリバオウレン(小芹葉黄連)”がそろそろ見頃が過ぎそうなことは前回も報告しましたが、”白い萼弁”と”花びら”が落ちた後に(写真:上右)、”果実”が円形に広がり始めた株も見られるようになりました(写真:下)。
 「房総のむら」では、2月には「下総の農家」の”ウグイスカグラ(鶯神楽)”の開花を確認していましたが、「上総の農家」や「旧御子神家住宅」(写真:上左)でも咲き始めました。田んぼのまわりでは”タネツケバナ(種漬花)”が増えてきています(写真:上右)。背は低く、時には”ロゼット状”に広がった葉の中央に”タンポポ(蒲公英)”が咲いています。裏を見ると”萼(総苞片)”が反り返っていないので”カントウタンポポ(関東蒲公英)”でしょうか。綿毛状態のものも見られました(写真:下)。
 「ドラムの里」の”河津桜”は、かなり咲いてきました。五分咲きくらいの木もあります(写真:上)。「房総のむら」では、館内の遠近で馥郁とした梅の香がほのかに漂っています。「上総の農家」では「梅林」も開放し、「旧平野家住宅」では茅葺民家の前の梅の花がいい感じです(写真:下左)。「武家屋敷」隣の「梅園」では”萼が赤い梅の花”も盛りです(写真:下中)が、”源平咲き”の梅は全体に蕾が大きくなり白い花が二輪ほど咲き始めましたが、まだ赤い花は咲いていません(写真:下右)。「房総のむら」では、これからが”梅の花”の見頃を迎えます。

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