2018年12月26日水曜日

冬至(二十四節気)麋角解(七十二候)12月27日~31日 ”冬至”です ”お正月を迎える”準備が着々と進んでいます ”茅葺屋根”葺き替え完了 ”幻想的な風景”

 今年最後の七十二候は、「麋角解(おおしかのつのおつる)」です。日本の”シカ(鹿)”は、春先に”角”が 生え変わるようですが、”大鹿(トナカイの一種)”は、今頃”角”が落ちるようです。毎年、”暮れ”が来ると、今年もあっという間に一年が過ぎたなぁ、と思います。今年も一年間、「房総のむら」をご利用いただきまして誠にありがとうございました。写真は、「房総のむら」から見た日没直前の”富士山”です。
 22日は、「冬至」でした。「房総のむら」では、「上総の農家」と「下総の農家」で、”かぼちゃ(南瓜)”と”ゆず(柚子)”の料理(写真:上)、”ゆず湯”(写真:下左)を再現展示しました。外国からのお客様は香りのいい”ゆず湯”に感心していました(写真:下右)。皆さんのご家庭ではいかがでしたか。”かぼちゃ”は食べましたか。”ゆず湯”には入りましたか。”ゆず”が浮いたお風呂に入ると、”ゆず”の甘酸っぱい香りとともに、体もあったまるようです。
 そして、「農家」では、お正月の”お飾り用”の”餅つき”が行われました。使用する”もち米”は「房総のむら」で収穫した”マンゲツモチ”です(写真:上左)。まずは、この”餅米”を”カマド”にのせた”セイロ”で蒸します(写真:上右)。蒸しあがったら、すぐに”臼”に移して”餅つき”です。はじめに”こめ粒”をつぶします。これをしないと”こめ粒”が飛び散ってしまいます。見学されていた男性の方が、”餅つき”はかなり経験されているようでしたので、つぶすところから手伝っていただきました(写真:下右)。
 見学されていた方々にも”餅つき”を体験していただきました。この日は外国からの来館者も多く、その方々には「ワン、ツー、ストップ」の声掛けで、”杵”を2回搗いだら休んでいただき、その時にスタッフが”餅”に水をつけました(写真:下左)。このリズムで、”餅つき”を数回繰り返していただきました。日本人の方が”杵”を打ち下ろすと、まわりから「ヨイショ!」の掛け声もかかっていました。
 最後に、再び最初の男性の方にお手伝いいただいて、”餅”が搗きあがりました(写真:上左)。搗きあがった”餅”はボールに移して(写真:上右)、別の場所で早速”お飾り用”の”丸餅”にしました(写真:下)。”お飾り用”に丸めた”餅”は柔らかく重ねると形が崩れてしまいますので、硬くなるまでそのままにしておきます。”餅つき”体験に参加した皆さん、ご協力ありがとうございました。おかげさまで”あっと”いう間に”餅”が搗きあがりました。「なつかしいね。今は”餅つき機”ですよ」とおっしゃっていた見学者の方もいらっしゃいました。また、”試食”を楽しみにしていた方もいらっしゃるようでしたが、申し訳ありませんでした。
 「房総のむら」では、”大そうじ”も終わり、”餅つき”だけではなく、”お正月のお飾り”の準備も始まりました。「大木戸」では、大きな”門松”が作られていました(写真:上左)。「商家の町並み」では、店によって違う”門松”を準備しています(写真:上右)。「農家」では、門や入口の”門松”を準備しながら、それぞれの「農家」で形が違う”お飾り”に”ダイダイ”、”裏白”、”ユズリハ”、それに”四手”などを付ける作業をしていました。”お正月のお飾り”については、「風土記の丘資料館」で現在開催中の企画展「正月を迎える」でも展示していますので、ご覧ください。
 お正月飾りに使う「房総のむら」の”ユズリハ(楪)”(写真:左)と”ダイダイ(橙)”(写真:右)です。”ユズリハ”はたくさんありますが、”ダイダイ”は数が少なく、”裏白”はありませんので購入しました。
 茅葺屋根”の葺き替え工事が終わった「下総の農家」の「木小屋」では、工事用の足場も撤去されました。遠くから見ると、葺き替えされた「木小屋」の屋根だけがやけに目立ちます(写真:上)。しかし、そんなに時間がかからないで周りの景観に馴染んでくると思います。”茅葺屋根”を真下から見上げると、”屋根裏”では改修した新しい竹材や新しい縄のきれいな結び目が見られます(写真:中)。また、”軒先”では「主屋」などの”茅葺”に比べ厚みは薄いですが、それでも”茅”の種類の違いがきれいな模様になって見えます(写真:下)。
 久しぶりに”霧”がかかりました。「房総のむら」から隣の「ドラムの里」の芝生の広場を見ると真っ白でした(写真:上左)。”門松”を準備中の「商家の町並み」も、うっすらと霧がかかっています(写真:上右)。「農家」の畑では、”光芒”も見られました(写真:中)。前日雨が降ったためでしょうか、朝日があたった畑からは”水蒸気”が”湯気”のように立ち上っていました(写真:下左)。最後は、林の中の”光芒”です(写真:下右)。太陽が高くなるにつれ、”幻想的な風景”はあっという間に消えてしまいました。
 晩秋に花を咲かせていた植物も、冬を感じさせてくれています。”コウヤボウキ(高野箒)”(写真:上左)や”オケラ(朮)”(写真:上中)、”シロヨメナ(白嫁菜)”(写真:上右)などは、果実が白い綿毛に被われています。”ススキ(薄)”が冬の日差しを受けて白く輝いていました(写真:下)。
 ”アオジ(青鵐)”でしょうか。寒くなってきて、垣根の下や林の中を飛び回っているのを見ていましたが、なかなか写真に撮れませんでしたが、「むらの架け橋」の近くで捉えることができました(写真:上)。「茶店」の裏の垣根の近くでしきりに枯葉を突っついている鳥がいました。こちらは”シロハラ(白腹)”でしょうか。枯葉を突っついたかと思うと、ピョンピョン跳ねて移動し、また枯葉を突っついていました(写真:下)。「農村歌舞伎舞台」の前の芝生広場に、立ち止まって”尾羽”を上下に振っていたかと思うと、足早に”ツツツツッ”と移動し、急に立ち止まってはまた”尾羽”を上下させる”ハクセキレイ(白鶺鴒)”がいました。じっと見ていると、睨み返してきました(写真:下右)。

今年一年間大変お世話になりました。よい年をお迎えください。来年は、1月2日、3日の臨時開館で「房総のむら」は始まります。ご来館をお待ちしております。

2018年12月24日月曜日

房総のむらの花だより

 本日は、資料館を出発し、堀割、上総の農家、むらの架け橋、おまつり広場、安房の農家、下総の農家、水車小屋、下総の田んぼ、武家屋敷裏を巡り観察しました。


●4cm位のキタキチョウ(秋型)が草の茎にジットとまっていました。成虫のまま冬越しします。

●コセリバオウレンが咲き始めました。4株が確認できました。

●先週に引き続きソシンロウバイがポツポツ咲き、膨らんだツボミが多く見られました。(資料館前のロウバイはまだツボミのままでした。)

●ホトケノザの花は寒い時期から咲き始め、今、堀割で沢山見られます。

●ハリギリの果実が沢山付いていました。ヤツデの仲間(ウコギ科)なので果実はよく似ています。

●野草の果実も沢山確認できました。--


--------------------------------
◎以上は、むらの自然ガイドボランティアさんからの写真と記録です。12月21日(金)の観察に基づいています。(風)




※自然観察会のお知らせ
 自然ガイドボランティアでは、月に一回、土日のいずれかを利用して来館者を対象とした「自然観察会」を開催しています。
 1月は下記の予定で行いますので、興味のある方是非ご参加下さい。

○日時 : 1月20日(日)午後1時30分から1時間程度(雨天中止)
○集合場所 : 総屋前
○今月のテーマ : 「ツバキとサザンカ」
○参加費 : 無料(むらの入場券必要)

2018年12月23日日曜日

ワークショップ「ミニ門松作り」を開催!

 本日、企画展「正月を迎える」のワークショップとして「ミニ門松作り」を行いました。体験者の皆さんとかわいい、手作り門松を作ります。
 講師は宮﨑弘先生です。宮﨑先生には、当館の演目「庭木の手入れコース」「竹垣作りコース」の講師としてもご指導いただいています。
 空き缶に藁を巻き付け、藁の端を編んで口縁部を作っていきます。この作業は一番難しく、全体の形を決めるとても重要な作業です。体験者の皆さんの、藁を見つめる眼差しは真剣そのものです。
 お手伝いをするスタッフも、真剣そのものです。体験者の皆さんと、楽しく製作しました。
 完成したミニ門松です。皆さんの玄関先を彩る、かわいい門松ができました。この他、当館では1月20日(日)まで企画展「正月を迎える」を開催しています。なお年内は12月24日(月・祝)までの開館で、新年は1月2日(水)から開館します。皆さまのご来館をお待ちしています。(前)

2018年12月22日土曜日

寒暖上手 六


平成30年も残りわずかとなりました

ここ、房総のむらでも朝には氷がはるほど冷え込んでいます


ところで、復元された縄文時代の竪穴住居を見ると

開口部は出入口しかありません

ところが、平安時代の寝殿造では、ほとんどが開口部となっています

建物の内側と外側を隔てるものが、壁を主とした構造から戸を主とした構造へ変わっていくのです

現在では、雨戸を設けない住宅も建築されるようになりましたが

雨戸は、建物内部を守る重要な設備でした

簡単な構造ながら、雨・風・保温・盗人などなど

「ガラガラガラ パタン」 と、夕方になると雨戸を閉める音が響きます(や)





2018年12月21日金曜日

房総のむらの花だより

 本日は、資料館を出発して、上総の田んぼ、竹林の坂、上総の農家、下総の田んぼ、下総の農家、安房の農家を巡り観察しました。


●花が終わった姿を観察しました。種子の形が大きく目立つものや、綿毛の根元に小さく目立たないものなどいろいろです。観察できた植物は次のとおりです。
 ノササゲ、オカトラノオ、シロヨメナ、ナルコユリ、ツルウメモドキ、コバギボウシ、ワレモコウ、コムラサキ、マンリョウ、アマチャヅル、イヌホオズキ、キバナアキギリ、フジバカマ、レモンエゴマ、ノダケ、オトギリソウ、ノハラアザミ

●ソシンロウバイの花が3輪咲いていました。これから開花の本番を迎えます。

●ユウゼンギクは下総の農家の庭で咲いています。

●ジュウガツザクラはおまつり広場で沢山咲いています。

●ヒメジョオンは6月ころから咲き始め、初冬までの長い花期です。

●安房の農家の庭では、コバノズイナの紅葉がきれいになり、トサミズキやヒュウガミズキのツボミが膨らんでいました。


------------------------
◎以上は、むらの自然ガイドボランティアさんからの写真と記録です。12月14日(金)の観察に基づいています。(風)

冬至(二十四節気)乃東生(七十二候)12月22日~26日 夏枯草などロゼット状の葉 ”凍る花” ”お荒神様の宿替え” お正月に:凧あげ・福笑い ”蹴ろくろ”体験 ”茅葺屋根”葺き替え3 冬の妖精”コセリバオウレン”開花

 二十四節気は、とうとう「冬至」になります。”日没”は既に延び始めていますが、”日の出”はまだまだ遅くなります。千葉では”暮れ”から1月の上旬にかけて午前6時49分まで遅くなるようです。朝、起きるのがさらに辛くなりますね。七十二候は、「乃東生(なつかれくさしょうず)」です。これは「夏至」の七十二候「乃東枯(なつくさかれる)」と”対”になっています。漢方薬にもなる”夏枯草(かこそう)=ウツボグサ(靫草)”が芽生えだす頃、枯れ始める頃を季節の移り変わりの目安にしているのですね。「房総のむら」の”ウツボグサ”も、葉をロゼット状に広げて芽生え始めています。
 地面を見ると、”ヒガンバナ(彼岸花)”の葉のように”線形”の細長い葉は直立しているものもありますが、多くは”ロゼット状”に葉を広げています。”ウツボグサ”だけではありません、”タンポポ”、”ノゲシ”、”ヒメジオン”などたくさんの植物が”ロゼット状”に葉を広げています。階段部分(写真:上左)や、斜面(写真:上右)でも、地面にぺったり張り付いています。風をよけ、たくさんの日光を浴びるためには、効率の良い形状だそうです。
 先週からここ数日”寒い朝”が続きましたので、今回も”霜柱”などの紹介です。「堀割の橋」にも”霜”が降りましたが、”朝日”があたるとすぐに消えてしまいます(写真:上左)。「農家」の”畑”では”霜柱”も成長していました(写真:上右)。日が当たると、”サクッ、サクッ”と音を立てて倒れていきます。”お茶(チャノキ)の葉”(写真:中左)や”サザンカ(山茶花)”(写真:中右)には、葉の輪郭に”氷の結晶”が立っていました。田んぼのまわりにまだ咲いていた花は、凍り付いていました(写真:下)。”朝日”が当たらない日陰ならば、午前10時くらいでもこんな風景を見ることができますよ。
 20日には「安房の農家」の「お荒神様の宿替え」が行われました(宿替え前=写真:上左、宿替え後=写真:上右、下)。我が国では、古くから”家屋敷”や周辺にいろいろな”神様”を祀り、”家内安全”や”火伏せ”、”盗難よけ”などを祈る習慣がありました。一般的に「荒神様」は”火の神様”、”火伏せの神様”であることが多いのですが、南房総市の旧三芳村で祀られている「お荒神様」は”家屋敷”を守る神様とされ、旧暦の5月7日と、11月7日前後に「宿」を新しく作り変えています。祀られている場所は、屋敷の鬼門とされる”艮(うしとら)”(北東)に位置します。
 「商家の町並み」「細工の店」の「凧作り」の体験では、長方形の”角凧”を作りますが、今回の企画展の関連ワークショップでは、”袖凧”を上げていただきました。”袖凧”は、千葉県の上総地方で”節句”などに揚げられてきた伝統的な”凧”です。房総半島が発祥とされる漁師さんたちが着る”万祝(まいわい)”を模した形です。”半纏(はんてん)”の裾が少し長くなったような形です。昔は、男の子の”初節句”には、4mもある大きな”凧”を上げた地域もあったようです。写真の”凧”は、小さくて20cm程です。
 ”凧あげ”の会場は、「風土記の丘」の「古墳広場」です。広場は”花見の見所”でもあり、まわりには”サクラ”など高い木もありますが電柱や電線はありませんので、”凧あげ”にはもってこいの場所です。”凧”は10枚ほど準備しましたが、小さくてもよく上がりました。カップルの男性の方がかなり高くまで上げて、女性の方に糸をまかせて、写真を撮っていました(写真:下左)。はじめはコートを着ていた女の子も、途中でコートを脱いで”凧”を上げながら元気に走っていました(写真:下中)。お父さんは手慣れたもので、そんなに走らなくても「ときどき、糸を強く引けば凧は上がる」と”コツ”を教えていました。この日は、微風で、強い風が吹きませんでしたので上げるのにちょっと苦労していたようです。中には、木の下を走ったり、糸をあまり伸ばしすぎたりして”凧”が枝に引っかかった方もいました。こんな風景も昔ながらの風景かもしれません(写真:下右)。留学生の外国人の方々も”凧あげ”に挑戦していました(写真:上右)。気が付きましたか、”凧のしっぽ”は長いU字状になっていて切れていません(写真:中)。これは、「房総のむら」の”凧作り”の指導者「仲田一夫」さんから教えていただいたやり方ですが、1本や2本の”しっぽ”のよりも安定しています。是非試してみてください。これからも1月6日、13日、20日に”凧あげ”の体験はできます。「房総のむら」で、”凧あげ”を楽しんでみませんか。
 現在開催中の企画展「正月を迎える」をご覧になった方々に、一家(一家族)に一枚「房総のむら」オリジナルの”福笑い”をプレゼントしています。昔ながらの遊びですが、こちらも家族そろって会話が弾む楽しい遊びです。
 ”福笑い”は、”おかめ”と”ひょっとこ”の二種類があります。お好きな方をお選びください。サイズは、A4版です。下についている口や目、鼻などを切り抜いて遊びます。目隠しをして、口や目などのパーツを顔の上に置いていくだけですが、出来上がった顔がお楽しみですね。上手にできるよりも、少しずれたほうがおもしろい顔になりますよね。ご家族でお楽しみください。なお、”福笑い”は数に限りがありますので、なくなり次第プレゼントは終了となります。申し訳ありません。
 こちらは、11月24日に「商家の町並み」「瀬戸物の店」で「製陶(蹴ろくろ)」を体験しているご家族の様子です。”ろくろ”を自分の足で蹴って回転させて、粘土塊から円形の器などを作る体験です(写真:上左・中)。娘さんとお父さんは皿状の器を、息子さんは湯飲み茶わんを作りました。体験者にしていただく”蹴ろくろ”はここまでです。
 出来上がった作品は、生乾きの内にスタッフが”高台”を削り出します(写真:上段)。さらに乾燥させてから、”素焼き”をします。1日目は、8時間くらいかけて”あぶり”をします。室温の15度くらいから300~400度くらいまで上げて水分を蒸発させます。その後、焼成をいったん止めて、翌日は190度くらいから焼き始め8時間ほどかけて最後は750度まで温度を上げていきます。”素焼き”をして、器の色は肌色になりました(写真:二段目)。次に”素焼き”した器を”釉”をつけて”釉がけ”し、”高台”の端の部分は”釉”を拭い取ります(写真:三段目)。今回は、左端の娘さんの作品は”天目(黒)”、真ん中の息子さんの作品は”そば(茶)”、お父さんは”るりなまこ(青)”の”釉”をかけました(写真:下段)。
 そして、いよいよ”本焼き”です。大きな”電気窯”の中に、出来上がった作品を並べて入れていきます(写真:上左)。”窯”の温度は、初めは15度くらいですが、まる一日半かけて1,245度まで上げていきます。焼成がおわったら、ゆっくり温度を下げるためにそのままの状態で2日間放置しておきます。そして、”窯出し”です。蓋を開けて作品を確認します(写真:上右)。いかがですか、発色もよくうまく焼けたようです。スタッフは、「湯飲み茶碗の茶色がいい感じにでた」とのことでした。”天目の黒”も、”コバルトブルーのるりなまこ”もすてきですよ。体験から一か月近くお待たせしましたが、やっと出来上がりました。お正月には、自分の足で”ろくろ”を回して作ったこの器に”おせち料理”をのせてみてはいかがですか。次は、”手びねり”などいかがですか。
 ”茅葺屋根”の葺き替えも最終段階です。前回に続き、”棟”が完成したら、上から足場の”竹棒”を外して”軒先”に向かって屋根の表面を仕上げながら下りてきます(写真:上)。表面の最後の仕上げは”バリカン”を使っていました。きれいにしては、下から横から見て突出しているところは”ガンギ”で押え(写真:中左)、へこんでいる所には”カヤ”を追加していきます(写真:中右)。この作業を何度か繰り返しながら”軒先”まで下がっていきます。最後に”軒先”と”軒”の内側(下)の”カヤ”も刈り込みます(写真:下)。
 足場の”竹棒”もすべて外され、残るは屋根の下方と”軒先”、それに”軒先”の下の仕上げです。”ガンギ”で押え、”カヤ”を追加しながら表面を平らにし、最後の仕上げは”バリカン”です。大きな”鋏(はさみ)”で仕上げると大きな凹凸ができやすいそうですが、”バリカン”ならば広い面積を仕上げることができるので表面を平らにしやすいようです。”軒先”の下は、作業中は見難い所ですが、足場が外されて下から上を見上げると一番目立つところなので、かなり神経を使うようです。”軒先”は真っすぐに仕上げられ、下から見ると、内側から”ワラ”、”シマガヤ”、そして表面の”ヤマガヤ”がきれいな層を作っています(写真:下)。
 作業が終了しました。昨年の「安房の農家」「主屋」では1か月半ほど時間がかかりましたので、作業工程を追いやすかったのですが、今回は作業開始から9日で終了です。あっという間に完成してしまい、現地を確認できない日があると、作業がかなり進んでいて作業の全工程を記録できてないところもありました。仕事中はほとんど口を開くこともなく、まさに”阿吽の呼吸”でチームワークよく作業を続けた職人さんに話を聞くと、毎年10棟ほどの”茅葺屋根”の葺き替えを行っているそうです。なるほど、その経験があるからできる”職人の技”を見せていただきました。ご苦労様でした。
 「風土記の丘資料館」中2階では、写真展「レンズをとおした房総のむら」が始まりました。ことしも、多くの方々から出展いただきました。いずれも四季折々の「房総のむら」の景観を、カメラのレンズをとおして切り取ったすばらしい映像です。中にはめったに見られない花などの写真や、普通の見る角度とは違った視点からの映像などもあり、出展者の目の付けどころには感心させられました。写真展は、来年の2月24日まで開催しておりますので、是非ご覧ください。
 「上総の農家」の横の林の中で”コセリバオウレン(小芹葉黄連)”が開花しました。三本開花しましたが、どれも”雄しべ”と”雌しべ”がありますので、”両性花”のようです。花が咲いたものは、背も低く葉のかげだったのでしょうか蕾は気が付かなかったので、いきなり咲いた感じです。去年もそうでしたが、「房総のむら」では”コセリバオウレン”の花が咲くのは、”ソシンロウバイ(素心蝋梅)”(写真:下右)の開花とほぼ同じ頃です。今年の開花は、ともに昨年よりは1週間ほど早いようです。”冬の白い妖精コセリバオウレン”の見頃はこれからです。

2018年12月18日火曜日

第40回写生コンクール2作品を展示しました


  1118日(土)まで風土記の丘資料館に展示していた入賞・入選作品のうち「館長賞」と「友の会会長賞」の作品を、総屋(総合案内所)に展示しました。
昨年と反対側の小上がりの窓の上に展示してあります。
是非ご覧ください。
来年度の受賞を目指してむらの四季の風景を写生しにいらっしゃいませんか?(写)





館長賞
 千葉 篤人(小学5年)
 「龍神」


友の会会長賞
 君塚 信宏
 「台車のある商家の風景」


2018年12月16日日曜日

大雪(二十四節気)鱖魚群(七十二候)12月17日~21日 ”寒い朝” 正月を迎える準備:”お飾り作り”・”どんど焼き”・”おせちの甘い物” ”亀の飾り結び” ”茅葺屋根”葺き替え2 ”ソシンロウバイ”開花

 二十四節気「大雪」の七十二候の末候は「鱖魚群(さけのうおむらがる)」です。川がない「房総のむら」では、”鮭”は見られませんが、、、おっと、一匹ですが今年は見られました。これまでも紹介してきましたが、現在開催中の企画展「正月を迎える」の正面展示の「懸の魚(かけのい)」にいました。ほかにも”伊勢海老”や”鰹”も下げられているので海産物としての”鮭”かと思われますが、”鮭”がいました。ここ数日、急に寒くなってきて日も随分短くなってきました。次の二十四節気は、「冬至」になります。 
 この時期、「房総のむら」で群がっている魚は、「堀割」の”鯉”くらいです。
 「堀割」には、まだ氷は張りませんが、「堀割」の横の予備の”舟”には薄い””が張りました。
 11日は、とても寒い朝になりました。「上総の農家」の畑も地面が出ているところは、”霜柱”が立ち(写真:下左)、”小雪”が降ったように白くなりました(写真:上)。緑色の”葉物”や”菜の花の葉”なども少し萎れたように丸まり白くなっていました(写真:下右)。
 ”だいこん”や”のらぼう菜”など”葉物野菜”に近づいて見ると、”氷の結晶”も見られました。
 12日は、「下総の農家」でも”すす払い”を行いました。高いところは、”葉が付いた長い竹”を使って”ほこり”を落としました。しょっちゅう”かまど”に火が入る「主屋」ですので、まさに”すす払い”です。
 ”障子”張替え中の「上総の農家」の庭(写真:上左)と、「安房の農家」の「主屋」(写真:上右)では、”お正月のお飾り作り”の体験が行われました。「安房の農家」では、”縁側”で住宅の正面に飾る長い”注連縄(しめなわ)”を作っています(写真:下右)。「上総の農家」では、”障子”も新しくなりました(写真:下左)。
 「上総の農家」で作る”お飾り”は、旧上総国の市原市栢橋地区”の事例を参考にしています。お相撲さんの”さがり”のような形です。今回の企画展「正月を迎える」では、「サゲをつける」事例で「鳥居型しめ飾り」に分類されています(写真:左)。「安房の農家」では、南房総市の旧三芳村千代(せんだい)地区の”お飾り”を作ります(写真:右)。南房総らしく、”イセエビの触覚”を強調したお飾りです。
 前回紹介した「下総の農家」の”ゴボウジメ”の”お飾り”とともに、「総屋」に房総三国の特徴的な”お正月のお飾り”が飾られました。
 現在「風土記の丘資料館」2階で開催中の企画展「正月を迎える」でも、”房総のしめ飾り”が紹介されています。ご自宅の”しめ飾り”と比較してみてください。
 「上総の農家」の畑には、「どんど焼き」の”やぐら”も準備できました(写真:右)。左端にある”ナタマメ(刀豆)”の”やぐら”と比べてもさらに高く、中央の竹は10mを超える高さがあります(写真:左)。”やぐら”の中にお正月に飾った”注連縄(しめなわ)”や”お飾り””書初め”などを積み上げ、”小正月”(房総のむらでは1月13日(土))に燃やします。その火で”餅”を焼いて、”無病息災”を祈って食べます。燃え上がる炎と竹の破裂音が勇壮です。竹の破裂音が「どんど焼き」の語源ではと思うほどです。参加してみませんか?また、お正月の”お飾り”や”注連縄”など、事前に「総屋」までお届けいただければ一緒に燃やします。
 「安房の農家」では、1月2日・3日の「むらのお正月」の”福茶”に使用する”大豆”を”七輪”の上の”焙烙(ほうろく)”で炒っていました。
 「商家の町並み」「菓子の店」の「おせちに作る甘い物(正月の準備)」で、お馴染み匝瑳市の「大川修功」先生の指導で作った”栗きんとん””黒豆”、それに”小豆”です。甘~い。おいし~い。お正月までは残っていませんね。
 「下総の農家」「機小屋(はたごや)」では、「草木染ストール」の体験です。体験では、草木で染めた糸を”機織り”を使って”ストール”を織りあげます。体験者の方は、”織機”の扱いも手慣れたもので、細かい指導がなくてもどんどん進めていきます。機織りの常連さんの方なのだなと思っていると、、、教えていただきました。体験者の方はもちろん常連の方でしたが、この日は数年前に「房総のむら」で自分で織った布(藍と欅で染めた糸)を仕立てて作った”ジャケット”を持参していらっしゃるとのこと。さっそく、試着していただいて写真を撮らせていただきました。自分で織りあげた”布地”で”ジャケット”つくることができるなんて、すばらしいことだと思いますが、そんなことができるのも「房総のむら」の体験です。皆さんもいかがですか。
 自分で作った生地から服を作ったということで、もう一人紹介します。季節はずれかもしれませんが、夏に「呉服の店」の「草木による型染」を体験されていた方も、体験で染めた布地で”ベスト”を作ったとのことでした。自分で作った、自分だけの、オリジナルの生地で作ったベストを恥ずかしげに、少し自慢げに見せてくれました。
 「商家の町並み」「小間物の店」の「亀の飾り結び」です。通常の「飾り結び」は、”花びら”の形ですが、この時期はお正月らしく、”金”や”銀”の紐でお目出度い”亀”の形にしました。来週も体験ができますので、縁起物の”亀”を作ってみませんか。
「下総の農家」の「木小屋」の”茅葺屋根”の葺き替えの様子です。前回は、屋根の下地の竹組の改修を紹介しましたが、いよいよ、屋根に”カヤ”をのせていきます。まずは、”軒先”にあたる部分から始められます。屋根の部分でも一番重要な部分になります(写真:上左)。この屋根では、一番下に”稲わら”が、その上に種類の違う二種類の”カヤ”が使われています(写真:上右)。”軒先”ができたら、”足場の竹”をのせその足場にのって、徐々に上に向かって”カヤ”をのせていきます(写真:中左)。その際に、”カヤ”の根元を整えるのに使うのが”ガンギ”と呼ばれる道具です(写真:中右)。一番上まで”カヤ”をのせ、”棟”を作ります(写真:下)。
 棟ができ上がったところで、棟の両端を飾る”エビ”と呼ばれるものを作ります(写真:上)。”注連縄”の”ダイコンジメ”のように中央部が太く、両端が細くなるように茅でUの字状にします。出来上がった”エビ”を棟の両端にのせて形を整えたら(写真:中)、一番上に”雁振瓦(がんぶりがわら)”をのせて棟は完成です(写真:下)。
 「上総の農家」の”ソシンロウバイ(素心蝋梅)”が一輪ですが花が開きました(写真:上左)。「安房の農家」の”スイセン(水仙)”も一本だけですが花が咲きました(写真:上右)。夏から秋にかけては花はほとんどが例年より早く開花しましたが、ここにきて例年とほぼ同じ時期の開花となりました。しかし、「上総の農家」の”チャノキ”には、時季外れですが数輪の花が咲いています(写真:下左)。そして、なんと”スミレ(菫)”も咲いていました(写真:下右)。