2019年9月26日木曜日

房総のむらの花だより

 本日は、資料館を出発し、上総の田んぼ、むらの架け橋を渡り草木の観察路、安房の農家、安房の畑、下総の農家、水車小屋前の坂、下総の田んぼを巡り、帰りに武家屋敷を観察して戻りました。


●ツルボの花が最盛期です。上総の果樹園の梅の木の下では大群生しています。

●キバナアキギリがポツポツ咲いています。本番はこれからです。

●ヒヨドリジョウゴやカラタネオガタマの果実が赤くなりました。

●ボントクタデは本蓼(ホンダテ)のように辛くありませんが、花はそっくりです。水辺に良く生えるフタバムグラが上総の果樹園に沢山生えていました。

●サルスベリの花の構造です。
 花びらは6個で、付け根は細く筒状。
 外側の雄しべは6個で、太く葯(やく)は紫色。
 内側の雄しべは多数で、細く葯は黄色。
 雌しべは1個で、中心から外側の雄しべ方向にカールする。


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◎以上は、むらの自然ガイドボランティアさんからの写真と記録です。9月20日(金)の観察に基づいています。(風)

2019年9月23日月曜日

より高度な技が光る~彫刻刀または篆刻刀~

 9月8日(日)15日(日)23日(日)の3日間、商家町並み鍛冶屋において「彫刻刀または篆刻刀」の製作体験を行いました。彫刻刀の体験では版木刀か平刀のどちらか選べます。篆刻刀の体験は、印鑑の材料に文字を彫るための鉄筆(てっぴつ)を作ります。この体験は「刃物」を作りますので、18歳以上の大人が対象となる体験です。


 
 指導者の先生は、北島和夫さんです。製品を作る場合に、すべてを叩き出して作る「総火作り」ができ、千葉県でも指定伝統的工芸品製作者に指定されている職人さんです。普段は下総鋏、ラシャ切り鋏などの刃物を作っています。
 

 作り方は最初に鉄を火の中に入れて温め、先端を打ちます。鉄の部材の先端を「刃」にするため細くするものです。次に鉄の部材を、細くすると先端は横に広がるので、「刃」の裏表と両横をヤスリで削ります。そして、炭の温度を見ながら鉄を堅くする焼き入れを行います。最後は荒い砥石と仕上げの砥石を使い、「刃」に曇りがないよう研ぎ出します。

焼き入れ
 
  体験に来た方は、夏に親子鍛冶屋教室で文鎮を作りました。息子さんも興味深く完成した篆刻刀を眺めていました。



 彫刻刀、篆刻刀の鋭い「刃」を、伝統工芸品を作る職人さんと一緒に作る体験をしてみてはいかがでしょうか!!!(い)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 































  




2019年9月20日金曜日

房総のむらの花だより

 本日は、資料館を出発し、上総の田んぼ、竹林の坂、上総の農家、上総の畑、呉服の店裏の畑、堀割、資料館連絡通路を観察しました。
 今週初めに訪れた、台風15号による樹木の倒木や枝折れが非常に多く見られました。


●ツルボが咲き始め、ススキはようやく沢山見られるようになりました。

●ため池のそばにはツユクサが、上総の農家にはムラサキツユクサが咲いています。

●コナラ、ガマズミ、ヤマウド、ヤマコウバシ、カキノキ、イヌマキなど樹木の果実が実っています。

●むらの中に多くある野菊のシラヤマギクとシロヨメナはこれからもっと増えるでしょう。

●秋の野草としてキバナアキギリが少し咲き始めました。

●クワクサ、エノキグサはとても地味な野草ですが、花が咲き始めました。

●上総の果樹園でフタバムグラの果実が出来ていました。この草は、田んぼの近くなど湿った場所に良く生えるのですが、果実園のやや乾燥した場所にあったので意外に思いました。


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◎以上は、むらの自然ガイドボランティアさんからの写真と記録です。9月13日(金)の観察に基づいています。 (風)

2019年9月16日月曜日

何を入れましょう~木箱作り~

 9月7日(土)8日(日)14日(土)15日(日)の4日間、商家の町並み木工所では「木箱作り」の体験を行いました。国産の杉板を材料にして、大工道具を駆使しながら本格的な木箱を組み立てます。成田市の岩瀬建築の大工さんである竹澤さんに指導していただきました。

 「木箱作り」は、〈けんどん〉と呼ばれるスライドする蓋のつく45㎝程度の木箱を作ります。鉋(かんな)、鋸(のこ)、金づちなどの大工道具を使い板材を加工していきます。




 木箱は、4つの手順を踏んで作成します。①墨付(すみつけ)。実際は鉛筆で印をつけます。②鋸で板材を切る。③鉋で削る。④釘を打つ。何度か作業していくと道具の使い方にも慣れてきます。



 自分の思うように作業は進みませんが、大工さんと一緒に組み立てていきます。


 体験された方は、出来た木箱を大変喜んでいました。木箱の中には、これから何を入れるか考えたいと笑顔で話されていました。出来上がった木箱からは杉の香りがしてきます。ぜひ一度、木目の美しい木箱を作る体験に来てはいかがでしょうか。(い)

2019年9月15日日曜日

変化朝顔に親しむ(2)


 今年度から始まった商家の町並み「変化朝顔の展示説明会」は、9月8日(日)をもって終了しました。週末の土日、午前と午後の2回、興味のある方に聞いていただきました。来年に向けて変化朝顔を継続して咲かせていく工夫を簡単にまとめていきます。
 
 朝顔は種で子孫を増やします。その種の中から細切れの花びらや縮れた葉などの変わった朝顔が時々出現します。そのような朝顔を「出物」(でもの)と呼びますが、この花は種を結びません。ラッパ状の見慣れた花を咲かせ種のとれる朝顔は「正木」(まさき)と呼びます。これらは「遺伝の法則」が作用していると言われています。



解説の様子
  
  「出物」からは種が取れません。そこで「出物」を咲かせるには、その親の朝顔から取れる種を選別して咲かせる必要があります。親の朝顔には変化の出やすい株と変化の出にくい株がおよそ半分ずつできます。朝顔の咲き終わる秋に株ごとに種を収穫し、それぞれの株の種を各20粒ほど試し播きをして双葉の様子を観察します。

解説(左)と種の選別作業(右)

 変化するものは双葉がよじれたり、しわが出たりするため普通に咲くものとは区別できます。そこで変化の出た種だけを残しあとは間引きします。変化の出やすい遺伝子を持ち、種のできる朝顔を「親木」(おやき)として栽培し続け「出物」の種ができるように効率よく種を維持していきます。以上の栽培方法が変化朝顔を咲かせ続けた江戸時代の人々の知恵です。

茎と葉に特徴のある変化朝顔(左)と牡丹咲の変化朝顔(右)

 今年の変化朝顔の展示は終わりましたが、この秋は来年に向けて種の選別作業をしています。朝顔の世話をしていた職員は、「先輩から受け継いだ種の管理が大変です。だけどしっかりと次へつなげていきたい」と話しています。解説を担当した職員は、「少しでも変化朝顔に興味を持っていただき、多くの人に見てもらいたいです」と言っていました。
 変化朝顔の展示説明会は来年も実施する予定です。江戸の人々が愛好した特徴あるかわいらしい朝顔をぜひ見ていただきたいと思います。(い)


2019年9月13日金曜日

房総のむらの花だより

 本日は、資料館を出発し、上総の田んぼ、竹林の坂、上総の畑、呉服の店裏の畑、呉服の店横、辻広場、堀割を巡り、最後に資料館連絡通路を観察しました。

●オミナエシの花期は長く、まだ盛んに咲いています。
●シラヤマギクやシロヨメナの野菊が咲き、サネカズラも咲き始めました。
●ワレモコウ、オオニシキソウ、アメリカタカサブロウ、ツリガネニンジン、ヒヨドリバナなど秋の野草も元気です。
●アキカラマツは花弁が無く、萼は開花すると脱落し、糸状の雄しべをカラマツの葉に見立てて名が付けられたそうです。
●センブリは2年草で1年目は葉だけで過ごし、2年目で開花します。2年目の葉は、1年目の葉と形が大きく変わり細くなります。
●ガガイモにようやく果実が2個出来ました。
●上総の畑の通路では、よく似たウリクサとトキワハゼを同時に見ることが出来ます。
●ジュウロクササゲは、豆が16個入っていると言うことですが、別名十八豆、十八ささげ、長さささげ、ふろう豆、ほろ豆、三尺ささげなどがあります。莢は柔らかく、莢ごと調理するレシピがネットに沢山紹介されています。
●クヌギのドングリに、ハイイロチョッキリという昆虫は卵を産み付けた後、枝先を3時間かけて切り落とします。今回、クヌギの木の下に枝先が沢山落ちていました。
●辻広場で変わりアサガオの解説をむらの職員の方から伺いました。

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◎以上は、むらの自然ガイドボランティアさんからの写真と記録です。9月6日(金)の観察に基づいています。 (風)

※自然観察会のお知らせ
 自然ガイドボランティアでは、月に一回、土日のいずれかを利用して来館者を対象とした「自然観察会」を開催しています。
 9月は下記の予定で行いますので、興味のある方是非ご参加下さい。

○日時 : 9月15日(日)午前10時30分から1時間程度(雨天中止)

○集合場所 : 総屋前

○今月のテーマ : 「三大民間薬草」

○参加費 : 無料(むらの入場券必要)

2019年9月1日日曜日

変化朝顔に親しむ

 土日に開催している「変化朝顔の説明会」も2週目に入り、房総のむらを訪れる人たちが辻広場の朝顔の展示場で足を止め、解説を熱心に聞いていただいています。植木鉢の支柱にツルを絡めたおなじみの朝顔ですが、花の形や葉っぱの様子が朝顔とは思えないものが多く、参加したお客さんも変化朝顔の魅力に魅せられたようです。





 変化朝顔の名称は葉や茎、花の色・形、咲き方などに由来すること、変わった咲き方に変化する確率が低いため希少価値が高く珍重されたこと、江戸の作り手は「遺伝の法則」として知られる以前に、経験的に理解し実用化していたこと、などを解説しながら「獅子咲き」や「牡丹咲き」の朝顔を鑑賞しています。



どのようにして種類を増やしたのか?

  江戸時代の2回目の朝顔ブームとなった嘉永・安政期(1840年後半から1850年代)には各地の作り手たちは競って品種改良を行い、品評会を開きながら新たな朝顔の開発に努めました。いろいろな種類が誕生した時期ともいわれています。ただ、朝顔は花が開く前に自家受粉するため別種類との交配はままなりません。どのように品種改良したのでしょう。生産者にとっては秘伝中の秘伝ということもあり、あまり文献が残されていませんが、次のような方法が合理的であったといわれています。

①堅いつぼみ中央の膨らみに縦の切り込みを入れ、雄しべや雌しべが見えるように開く

②雄しべだけを取り除く。

③元の状態にして切り込みが開かないように筒状のもので覆う(ネギを輪切りにしてかぶせる)。

④開花直前に覆いを外し、他の朝顔の花粉を雌しべに付けて交配する。

⑤印を付けておいて他の種が混じらぬように株ごとに種を収穫する。

⑥種をまき、今までと違う変化が生じていれば改良が成功となる。(OH)