2019年3月10日日曜日

啓蟄(二十四節気)桃始笑(七十二候)3月11日~15日 桃"笑わず ”もちびやり” ”篠笛講習会”で船頭小唄(^^♪~ ”浮世絵講習会上級”最終回 ”薬研”の使い方 ”シュンラン”咲く ”イラガの繭”


 七十二候は「桃始笑(ももはじめてさく)」になります。「笑」で「さく」と読むのは、初めは「咲」も「笑」の意味であったものが、花が開くことをほほ笑みに例えて「咲」が使われたことにあるようです。ちなみに、中国の七十二候では「桃始華」とあらわされています。「房総のむら」の”ハナモモ”も蕾がかなり大きくはなりましたが、”笑う”ところまではいきませんでした。
 「安房の農家」の「モチビヤリ」の再現展示です。「雨水 土脉潤起(2月19日~)」で県内の「オビシャ」の事例を紹介しましたが、安房地方では「モチビヤリ」を行います。”ヒヤリ”とは”日遣り”であり、本格的な農作業が始まる前に地区の人たちが集まって飲食して時を過ごします。日本人は、飲食をともにすることによって、互いに離れがたい”縁”で結ばれるものだと信じることが多いといわれています。再現展示は、南房総市旧三芳村山名地区での「モチビヤリ」の事例で、農作業の取り決めなどを行った後に共同飲食します。個人の膳には”海苔巻き”や”煮しめ”などが並べられ(写真:下左)、中央には”黄粉をまぶした大福餅”が大皿にのせられ番号が付けられています(写真:上、下右)。同じ番号の”こよりのくじ”を引いた人が持って帰る慣習があります。
 「商家の町並み」「細工の店」の体験、「篠笛講習会」のようすです。「細工の店」では「篠笛作り」の体験が行われます(「商家・細工の店『篠笛作り』参照)が、その体験で作った”篠笛”を使って実際に音を出す吹き方の練習もします。講師は、「篠笛作り」の指導もしていただいている佐原囃子の「赤坂 明」さんです。”篠笛”が吹ける経験者の方々は、太鼓の「音に合わせて”佐原囃子”の練習です(写真:左下)。初心者の方は、「赤坂」さんに”笛”の持ち方から教えていただき、最後には練習曲として「船頭小唄」を吹きました(写真:右)。しかし、2、3時間の練習ですぐに完全に”篠笛”が吹けるようになるものではなく、なによりも練習が大切なようです。地域に受け継がれてきた”獅子舞”や”踊り”などの”民俗芸能”の”お囃子”の”篠笛”も、現代の生活の中では日々の練習がなかなかできないこともあってか”篠笛”の後継者が少なくなって困っているようです。”祭り”や”民俗芸能”の継承のためにも、皆さんも”篠笛”の吹き方を覚えてみてはいかがですか。
 「商家の町並み」「本・瓦版の店」では「浮世絵講習会(上級)」の体験です。”浮世絵の摺り”の体験のようすはこれまでも何度か紹介してきました(「大寒 水沢腹堅(1月25日~)など)が、その中でも最難関の「浮世絵講習会(上級)」はこの日が最終日です。体験者の方々が摺るのは、ご存知「喜多川歌麿 婦女人相十品」の一枚「ポッピン(ビードロ)を吹く女」です(写真:左)。サイズもこれまでの”小判”や”中判”ではなく、大きな”大判錦絵”(25.2cm×37.3cm)になりますので、それだけでも難しいと想像できます。しかも、この絵の場合は、”髪の毛の生え際”などがきれいに出せるかといった点も”摺り”には難しい絵のようです。実際、使用する”和紙”が大きくなったことで、”見当”をうまくあてたはずなのに”ズレ”が生じたりと大変のようでした。指導の「松崎啓三郎」さんが摺ったもの(写真:左)は、背景が”雲母(うんも)”の光沢で光る(雲母を見えやすく光に反射させました=写真:上右)”雲母(きら)摺り”ですが、今回は”雲母”は使用はしませんでしたが、それでもかなり難しそうでした。体験者の皆さん、お疲れさまでした。やはり伝統的な技術や技の習得には、時間がかかりますね。
 こちらは、「商家の町並み」「薬の店」の「七味唐辛子」作りの体験のようすです。「七味唐辛子」作りについても「大寒 鶏始乳(1月30日~)」などで紹介しましたが、この日も体験者の方が”薬研”で材料の”トウガラシ(唐辛子)”などを摺り潰していました。”薬研”は、中央部がV字形に深く窪んだ船形をした”受皿”の中で、やはり先端がV字形(最先端は丸みを帯びている)の”円盤”の中央についた握り手で動かして薬などの原料を砕いて粉にする道具です。時代劇などで”薬研”の”円盤”の動かし方を見ていると、前後させて作業をしているように見えたのではないかと思いますが、実は”円盤”をただ前後に動かすだけでは原料は粉にならないのです。”薬研”は、”V字円盤”の先端手前と”V字受皿”の底より少し上の平らな部分で原料を摺り潰すことで粉にすることができるのです。ですから、”円盤”は少し斜めにして”受皿”の壁にそって押すようにして回転させます。わかっていただけたでしょうか。ちなみに、”薬研堀”という”堀”は、堀の形状が”薬研”の”受皿”のようにV字形の”堀”のことです。
 「下総の農家」の”シュンラン(春蘭)”が咲きました。庭に移植されていて観察しやすいのですが、地面には落ち葉などがないために雨で跳ね返った土が付着して汚れているのが少し残念です。
 「武家屋敷」隣の梅のなかでも開花が遅れていた、一本の木に赤白の花が咲くいわゆる”源平咲き”の梅も咲き始めました(写真:上)。近くの木の萼が赤い梅の花を下から覗くと、全体にピンクがかって見えます(写真:中)。開放している「上総の農家」の「梅林」の梅はかなり花が咲いています(写真:下)。
 「風土記の丘」の園路に”キジムシロ(雉蓆)”が咲いていました。後方にはまだ花びらを開き切っていない”スミレ(菫)”もありました(写真:上)。「上総の農家」の田んぼのまわりの黄色い花は”ミツバツチグリ(三葉土栗)”です(写真:下左)。近くに”コハコベ(小繁縷)”も咲いていました(写真:下右)。
 ”ユスラウメ(梅桃、山桜桃梅)”はまだ咲きませんが、枝の二股のところに”イラガ(刺蛾)”の”繭”がありました(写真:右)。下から見ると茶色の縞模様がついています(写真:左)。”繭”と聞くとやわらかい形状のものを想像するかもしれませんが、茶色の線が入った”イラガの繭”は白く硬い卵状の殻で日本の昆虫がつくる”繭”の中では最も固いそうです。

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