2018年2月28日水曜日

雨水(二十四節気)草木萌動(七十二候)3月1日~5日 「梅の香ほのか」で「草木染」「三三」師匠登場 「北斎」幻の「総州銚子」復刻


 暦は3月です。七十二候は、「草木萌動(そうもくめばえいずる)」です。”草木”も本格的に活動を始めたようですが、今回は「むらの梅」の紹介です。今年も梅の花は、「武家屋敷」「茶室」の”八重の紅梅”から咲き始め、「上総の農家」の”白梅”が咲いたことも紹介してきましたが、「風土記の丘水生植物園」の”紅梅白梅”(写真:上左)、「旧平野家住宅」の”赤っぽい梅”、「旧御子神家住宅」の”額が青っぽい梅”(写真:上中2枚)、「武家屋敷」の”赤い額が目立つ梅”(写真:上右)、そして「水車小屋」周辺や「下総の農家」(写真:中右)などでも咲き始めました。「房総のむら」の広い館内には、いろいろな種類の”梅の花”が咲きますので、そこも見どころです。「上総の農家」の”梅林”でも花が大分増えてきました(写真:下左)ので、”梅林”を公開しました。”梅の木”の下まで近寄ることができますので、間近で”梅の香ほのか”をお楽しみください。
 「二十四節気」の「草木萌動」に関連して、「むらの草木染」です。「草木染」については、これまでも紹介してきましたが(ブログ:12月16日公開)、こちらは(別の)12月16日公開のブログ「大雪 鱖魚群」で紹介した「商家の町並み」「呉服の店」の年間6回で体験する「草木による型染」の続きになります。前回は、自分で作った”型紙”を使って”糊を置き”、さらに”豆汁(ごじる)”を引きました。今回は、”染料”を作り、その”染液で引き染め”します。”染料”は、「房総のむら」の体験「果樹の手入れ」で「上総の農家」の梅林で剪定された「梅の木」を使いました(写真:左上)。”染料”を6回ほど引き、その後”媒染”(アルミ)→”染料”→”媒染”→”染料”引きを繰り返し、部分的に色を変える箇所は、”鉄”や”銅”の”媒染”で”色さし”をしました。指導者の「安井永子」さんは、「草木染」について「自然の植物を利用するため、計量的な操作はできにくく、勘が必要になります。多くの体験を通して学んでください」とのことです。
 こちらは、「下総の農家」「機織り(はたおり)」の「草木染ストール」です。使用する木綿糸は、「房総のむら」の”草木”などで染めた糸を使います。「下総の農家」では、染める原料としては、”ケヤキ””ザクロ””ウメ””ヤマモモ””ガマズミ”などの樹木や”ベニバナ””コブナグサ””ヨモギ””フキ”などの植物などを使用します。”染料”が”化学染料”ではない植物ですので、濃い鮮やかな色ではありませんが、やわらかい、落ち着いた感じのする”色合い”が素敵です。体験では、幅25cmで長さが130cmのストールや、幅40cmで長さ180cmのストールを1日かけて織り上げます。
 今回、木綿糸を染めるのに使用した原料は、”ケヤキ”です。①材料となる”ケヤキ”の木を鍋に入る大きさに切り、染料が出やすくするために木を割って沸騰してから約20分煮出します(写真:上左)。②”染液”を”さらし布”で濾します。3番液くらいまで取ります(写真:上右)。③糸は湯につけて十分に空気を抜いて、”染液”が染み込みやすくしておきます(写真:中左の右端)。④”染液”に糸を棒に通して繰りながら沸騰して20分ほど”煮染”します(写真:中右)。⑤”媒染液(アルミ液)”に20分浸して(写真:下左)から水洗いし、糸が冷えたら洗って干します。⑥「下総の農家」の「機小屋」の前でよく目にする光景です。”染め”を重ねられた糸が干されています(写真:下右)。そして、1か月から1年置いて、また”煮染”をします。この作業を繰り返して、”染めを重ね”て色を濃くしていきます
 染め上がった糸は、1年ほど”寝かし”色が落ち着いてから”機織り”に使用します。写真左上方の白い糸は”染めていない糸(購入した糸の場合は、水気をはじく油分などの不純物が含まれているのでそれらを取り除く”精錬”の作業をします)”で、手前の淡いピンク色の糸は昨年度”ケヤキ”で染めた糸です。このような”草木”で染めた糸を使った”機織り”体験では、”ストール”のほかに”テーブルセンター”や”コースター”なども織ることができます。ご自分で、オリジナルの”マイストール”を織ってみませんか。
 「商家の町並み」「呉服の店」の”藍甕”です。”植物染料”の中で青を発色するのは、”藍”だけです。しかし、”藍”は、水に溶けませんので、”草木染”のように煮出して”染料”を取り出すことはできません。そこで、水に溶けない”藍”を発酵という過程で染色可能な状態にすることを”藍を建てる”といいます。12月に新たに”藍を建て”始めたことは紹介しましたが、順調に育っているようです。表面には”ギラッ”と”紫金色”の”還元膜”が光り、中央には”泡(華)”が盛り上がっています
 満員御礼!「房総のむら」の「落語会」「房総座」には、「柳家三三」師匠の登場です。この日も大勢のお客さんが「総屋」2階に詰めかけました。今回のお召し物は、濃い緑色の着物です。素敵ですね。”二つ目”時代から「房総座」には出演していただいておりますが、初めの頃は「三三」という名前を説明していたように記憶していますが、今や押しも押されぬ有名落語家です。今回は、”二番煎じ””たいこ腹””しの字嫌い”を披露していただきました。お酒を飲む”仕草”、主人と奉公人の”掛け合い”、人物の入れ替わりのタイミング、とにかく聞いていて落語の”リズム”が”心地”いいんです。「引っかかって”し”を言ってしまいそう」「素人に”ハリ”を打たれたら怖いだろうな」「お茶といってお酒を飲むんだよな」などと想像させられ、その世界に引き込まれてしまいます。次回の出演も楽しみにしています。

 「総屋」2階に並んだお二人(写真:左)は、”当館ブログ”にもしばしば登場いただいている、匝瑳市八日市場の江戸時代から続く和菓子店「鶴泉堂」店主の「大川功修」さん(左)と、現代の”浮世絵摺り”の第一人者「松﨑啓三郎」さん(右)です。お二人とも、「房総のむら」で技術指導や実演などをしていただいております。この日は、「鶴泉堂」さん所蔵の”浮世絵”を「松﨑先生」に見ていただきました。「松﨑先生」曰く、「すばらしい」「特に彫りがすばらしい」「大事にしたほうがいいですよ」と、さすが江戸時代から続く老舗の”お宝”です。「鶴泉堂」さんの現在の建物は、国登録文化財(建造物)に指定されていますが、”お宝”は建物だけではないようです
 そこで、”浮世絵”のお話です。「葛飾北斎」といえば、『富嶽三十六景』で知られる”浮世絵師”ですが、その「北斎」の作品で残されている版(浮世絵)が非常に少なく”幻の作品”とされるのが『千絵の海』(10編で構成)シリーズです。このシリーズは各地の河川や海で漁をする人々の様子を描いています。その中には千葉県の「総州銚子」「下総登戸」「総州利根川」の3編もありますが、その中でも特に「総州銚子」は世界中で現在6枚しか確認されていない”幻中の幻”です。総州銚子」は千葉県銚子沖の波の激しさをよく表し、手前に大きな波を描き遠くに富士山が見えるあの有名な「神奈川沖波裏図」に匹敵する作品と評されます。今回、「房総のむら」では「松﨑啓三郎」さんにその「総州銚子」の”復刻”をお願いし、完成した”版木”を「房総のむら」の「浮世絵講習会」で摺り上げていただきました。写真は”初摺り(しょずり)”で、下の写真は”後摺り(あとずり)”です。”初摺り”とは、”版木”に初めて色を付けて摺った1枚目の絵のことです。”版木”は”ヤマザクラ”の”無垢材”ですが、”無垢材”だと湿気や乾燥による歪み、割れが少ないそうです。しかし、初めて使用する”版木”は乾燥が進み、どうしても”ゆがみ”が生じ、さらに乾燥したことで”絵具がなかなかのらない”のです。そのため”初摺り”は端の方が少し”ズレ”ていて、また、色がのらないために”かすれ”ているところもあります。これが”初摺りの特徴”です。
 こちらは、”浮世絵”らしい”ビビット”な印象ですが、これが”後摺り”と呼ばれるものです。”初摺り”から時間がだいぶたち、”版木”に色が馴染み”板”に十分な水分が行きわたったことで摺りやすくなっています。”初摺り”を基に修正を加えたことで、”後摺り”は”ズレ”が少なく、色も濃くよくのっている印象を与えます。”摺師”は、”初摺り”の絵を基にして”ズレ”を修正し、絵具を余分につけたり減らしたり、また色を変えてしまう場合もあります。なお、浮世絵は”版元”が売り出しますが、その最初に売り出された分(初版)を”初摺り”、その後の分(二版・三版、、)を”後摺り”と呼んでもいるようですが、「松﨑先生」は、「本来”初摺り”は”最初の一枚目”」とのことです。浮世絵を摺り上げるためには、奥が深い”技”や”技術”がたくさん盛り込まれています。「浮世絵講習会」では、体験者の皆さんに”浮世絵の摺り”の技術をわかりやすくお教えいたします。ぜひ体験においでください。

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