2018年7月17日火曜日

小暑(二十四節気)鷹乃学習(七十二候)7月18日~22日 外人さんも”七夕馬”と”組紐”作り ”百日紅”と”千日紅” 日本遺産「北総四都市江戸紀行」佐原の大祭

 七十二候は、「鷹乃学習(たかすなわちわざをなす)」で”鷹の幼鳥”が飛ぶことを覚える時期とのことです。「房総のむら」では、”鷹の幼鳥”は確認できませんので、最近の”田んぼ”の様子を紹介します。”田んぼ”では、”分けつ”が進んだ”稲”が大きくなってきたこの暑い時期に、水を抜いて”ヒビ”が入るまで乾かす”中干し”をします(写真:右)。”土用干し”とも呼ばれるようです。こうすることで、根腐れを防ぎ根の活力を高め根が強く張り、また過剰”分けつ”を抑制することができるのだそうです。おいしい”お米”をたくさん収穫するためには、いろいろなことをしていくのですね。
 「下総の農家」では”チガヤ(茅)”の”芯”をとっていました。この”チガヤ”は、当ブログ3月の「啓蟄 桃始笑」で紹介した”ミノ(蓑)”作りに使います。”チガヤ”の柔らかい葉(写真:上左)を根元の方から”釘”にひっかけて引っ張る(写真:中左)と、やわらかい葉の部分は”釘”で曲がって引っ張られますが、葉の中央を縦に走る堅い芯の部分は曲がらずに葉から離れます。非常に原始的な方法かもしれませんが、”芯”だけが確実にきれいに取れます。”芯”が取り除かれた”チガヤ”は天日干しで乾燥します(写真:中右)。取り除いた”チガヤ”の”芯”は捨ててしまうのですが、チョット工夫して、”機織り”の”緯糸(よこいと)”代わりにその”チガヤ”の”芯”を利用してみました(写真:下左)。糸だけで織るとゴワゴワ感がありますが、少し硬い芯ですからピッしとした感じは、夏のコースターやテーブルセンターにも合いそうです(写真:下左、左は芯が取り除かれた”チガヤ”、右が取り除かれた”チガヤ”の”芯”です)。なかなか素敵ですよ。”天日干し”をした”チガヤ”の近くに、”真っ赤な煎餅(せんべい)状のものも干されていました(写真:下右)。染め物の原料となる”紅餅(べにもち)”です。収穫した”紅花”を水洗いし、臼で搗いて団子状に丸め乾燥させたこの状態で保管します。”餅”といっても”煎餅(せんべい)のようです。完成すると”紅花染め”に使用します。
 「安房の農家」の「七夕馬作り」の体験です。”南房総地方”で作られる”七夕馬”は、刈り取った”チガヤ”を天日干しして乾燥させた”チガヤ”で作ります。まだ、緑色が残っています(写真:上)。手前の”顔”の部分が輪になって、”お腹”の部分が少し膨らんでいるのが”牛”で、後ろの”馬面”で全体に細いのが”馬”です。今年の体験には、外国人の高校生の方も参加していただきました(写真:中)。なにか、不思議なものを作らされているといった感じでしょうか。女性の方は、この日の朝にフランスから来日したばかりとのことですが、午前中に商家の町並み「木工所」で”お箸作り”を体験し、午後から「茶室」で”お点前”を体験して、それから”七夕馬”作りと大忙しです。男性のご両親が「房総のむら」を知っていて、”日本の文化”を知ってもらいたくて連れてきたようです。うれしいことです。日本代表も負けずに、上手に”七夕馬”が出来上がりました(写真:下)
 商家の町並み」「小間物の店」では、アメリカ在住のドイツ人の親子の方が、”浴衣”を着て”丸台”で”四つのコマ”を交互に組んで作る”眼鏡紐”(写真:右)作りを楽しんでいらっしゃいました。この親子の方々も、「木工所」でも”お箸作り”も体験されており、浴衣姿で1日「房総のむら」を楽しんでいただきました。
 「むら」の”ヤマユリ(山百合)”は、最盛期といったところでしょうか。そんな”ヤマユリ”を観察していると、園路沿いの”ヤマユリ”に”支え棒”をして”ユリ”を起こしてくれているものがありました。しかも、5本や10本ではありません。おそらくここを散歩される方が、”横になったヤマユリ”を見かねて、”支えの棒”を添えて花を起こしてくれたのだと思います。ありがとうございます。おかげさまで、皆さんが”ヤマユリ”の花を気持ちよく見ながら散歩できます。感謝です。
 変種の”ヤマユリ”です。普通の”ヤマユリ”は、”外花被”3枚と”内花被”3枚ですが、この”ヤマユリ”は二つの花が合体しており、”外花被”と”内花被”が交互に開いて合わせて12枚の”花被片”がついています。しかし”雌しべ”と”雄しべ”は、少し離れて通常の1+6です(写真:左)。”花柄”が1本で”花被片”がくっついている様子は、裏側から見るとよくわかると思います(写真:右)。”花”が重そうで、”竹矢来”に寄りかかって横になっていました。
 夏の花”ムクゲ(槿・木槿)”です。「下総の農家」では純白の花と紫の八重の花が咲いています(写真:上左、中右)。「風土記の丘」「旧御子神家住宅」では濃いピンク色の花です(写真:中左)。「茶室」のある「武家屋敷」の庭には、「千宗旦」が好んだことから”宗旦木槿(そうたんむくげ)”とも呼ばれる、中央が赤い白の一重の花も咲いています(写真:上右)。「房総のむら」入口の「大木戸」近くにも薄い紫色の花が咲いています(写真:下)。
 「下総の農家」の”サルスベリ(百日紅)”です。”サル(猿)”も滑ってしまうという”ツルツル”の木ですね。比較的長い間花が咲いていることから、”百日紅”とも呼ばれるそうです。この暑さにもかかわらず、そんなことは関係ないかのように鮮やかに咲いています。この紅色の花を見ると、まさに夏の花といった感じです。
 「上総・下総の農家」の”センニチコウ(千日紅)”も咲き始めています。こちらは、”サルスベリ(百日紅)”よりもさらに長く花が咲いていることから”千日紅(センニチコウ)”と呼ばれるようになったとのことです。しかし、この花は、花を見るのではなく”松ぼっくり”をつぶしたような形の”苞(ほう)”と呼ばれる紫色や白色の部分を鑑賞するようです。その”苞”の中に、小さな小さな黄色い花が咲いています。
 「上総の農家」の畑から、”ナタマメ”の花です(写真:上)。大きな豆ができますが、花も大きいですね。”ヘチマ(糸瓜)”も花が咲きましたが、”雄花”の下には膨らみはありません(写真:中左)が、”雌花”の下には”ヘチマの赤ちゃん”がいます(写真:中右)。”ラッカセイ(落花生)”も黄色い花が咲きました(写真:下)。この花から糸状のものが伸びて土に潜って落花生ができます。
 「下総の農家」の”ハマナシ(浜梨子)”です。花は5月12日に撮影しました(写真:左)。実はかなり熟してきたようで、赤味を帯びてきました(写真:右)。普通は”ハマナス”と呼ばれているわけですが、かの「牧野富太郎」博士の説に従ってあえて”ハマナシ”としました。果実を見ると、なるほど長くなる”茄子(ナス)”の形ではなく少し平べったいですが”梨(ナシ)”ですね。牧野博士いわく「この実は熟するとその厚い果壁の肉が酸(す)い甘いので土地の子供どもが採って生食していて、そこでそれを梨の実になぞらえたものである」とのことです。
 「上総の農家」の”ノコギリソウ(鋸草)”が咲き始めました。葉が”ギザギザ”で、鋸(のこぎり)のようなところから名前が付いたようです。 
 ”タカトウダイ(高灯台)”です。台の上に黄色の小さな花が咲いたように見えます。こんなところから”灯明台”に見立てられての名前でしょうか。しかし、この花、”花びら”はなく中央にある黄色の部分は”腺体”と呼ばれ、その近くに”雄しべ”があり中央の団子状の膨らみがあるのが”雌しべ”だそうです。変な形の花ですね。
 水が溜まる湿地に生える植物”ヒメガマ(姫蒲)”です。”花や果の穂”は上下二段になっていて、上方の”雄花”と下方の”雌花”が離れているのが特徴だそうです。「上総の農家」の下の「池」で見られます。
 ”夏祭り”の時期ということで、前回に引き続き7月14日の「佐原の大祭 夏祭り」の様子です。「佐原の大祭」も、「成田祇園祭」などとともに”日本遺産”「北総四都市江戸紀行」の構成文化財の一つです。香取市佐原は江戸時代には、”利根川の東遷”により現在の流れになった”利根川”に面し、”関宿”を廻って”江戸川”経由で”江戸”に繋がっていたことから、東国の物資を江戸に送る”商業都市”として栄えました。江戸からも有形無形の文化が流れ込み、”江戸まさり”と呼ばれる独自の文化ができました。”佐原の大祭”とは、”八坂神社”の”夏祭り”と、”諏訪神社”の”秋祭り”を合わせた呼び方です。なんといっても巨大な”山車”が見事です。国の”重要無形民俗文化財”の指定を受けている”佐原の山車行事”は、”日本遺産”の認定ばかりではなく、”ユネスコ無形文化遺産”に「山・鉾・山車行事」として登録されています。
 二層構造の巨大な”山車”は細かい彫刻等で飾られ、上部には歴史上・伝説上の人物などがのせられ、下部に”佐原囃子(さわらばやし)”を演奏する”下座連(げざれん)”が乗っています。特に、表情も豊かな”生人形(いきにんぎょう)”と呼ばれる”大人形”は、一見の価値があります。”経津主命(ふつぬし)”は、名工三代目「安本亀八」作です(写真:上左)。”太田道灌(おおたどうかん)の凛々(りり)しい顔を見てください(写真:上右)。”天鈿女命(あめのうずめのみこと)”は、最近の調査で1804年の製作で、”佐原の山車”の中では一番古いことが分かったそうです(写真:下左)。”金時山姥(きんときやまんば)”の”金時(金太郎)”は、今まさに振り上げた”まさかり”を打ち下ろそうとしている様子がリアルです(写真:下右)。夜になって”小野川”ぞいの国の”伝統的建造物群保存地区”の狭い道を”提灯”に飾られた”山車”が通ると、川面に”山車”が写ります(写真:前の左下)。笛や太鼓で奏でられる”佐原囃子”とともに、”江戸まさり”と呼ばれる勇壮豪華な「佐原の大祭」です。

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