今年度の企画展「里山の暮らしといきもの」は終了しましたが,そのなかで,房総のむらで採集された,新種のきのこの標本も展示しました.●シモウサアシブトホコリタケ Lycoperdon shimousanum Kasuya というきのこです.●房総のむらでは,昭和の終わり頃から,毎年,千葉県立中央博物館とともに,野生きのこの観察会を実施し,採集された標本類(房総のむらのものは現在約1400点)は,中央博物館で標本として保管され,貴重な研究の材料となっています.名前のつかない未知種であっても乾燥し,ラベルを添付し,標本にして研究者の研究を待つのです.●このきのこは,1991年10月6日の観察会で採取されたものでした.属名だけの「名無し」の標本は,筑波大学の学生であった糟谷大河さんのもとにわたり,調査の結果,世界のどこにも採れたことのない新種であることが明らかにされ,2006年に学術誌に発表されました.いまだに「房総のむら」でしか採集例がありません.●今回の企画展では,里山として管理されている自然は貴重であることをご覧いただきましたが,今回の新種のように,まだまだ名前のつかない生物も,房総のむらのような里山環境に見られる,ということを知って頂くために,世界に1点しかない,ある意味で「国宝」級の標本(正基準標本,ホロタイプ)を展示しました.●また,もうひとつ興味深いのは,今回の新種は,専門家がみつけたものではなく,観察会に参加した一般の方々が見つけたものだ,ということです.市民の協力を得て,はじめて日本や世界の生物種の目録づくりが,すすむのだ,ということですね.
2012年12月22日土曜日
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